ピアノ発表会

ぎりぎりの時刻でホール入り。

写真撮影をした後、先輩のコンチェルトの譜めくりをした。


さすがだ。

1時間弾ききってしまうんだもの。

集中力と体力、どうすればあんなにつくのかな、と思った。

ソロも舞台裏で聴いていたけれど、本当にかっこ良かった。

尊敬する先輩だ。

 


それが終わったら、フルートの準備。

試験用の黒のドレスに、バラのネックレスで飾って。


隣に譜めくりで鎌田先生が座っていたのがこわくてたまらなかった。

それでもやはり、楽しく弾けた。

やっぱりこの曲は素敵だ。

やっぱり誰と弾くのはステージの上でも楽しい。

 

ただ、次やる時はもっともっとプーランクの音に近づけられるようにしたいなと思う。

門馬さんのフルートは言わずもがな素敵だった。

 


アンサンブルが終わって衣装チェンジ。

練習室ではソロの順番待ちの高校生以上のメンバーで、様々な音楽話に花を咲かせていた。

みんな着替えると、オレンジや青や緑やゴールドと華やかに。

わたしのピンクのドレスも大好評だった。


舞台袖に入ると鎌田先生に

「綺麗ねぇ。

花嫁さんみたい!」

なんて言われたほどだ。

(ウエディングドレスのリメイクなのだから本当にその通りだ。)


正直、ステージに出るまでは不安で不安で仕方なかった。

鎌田先生には少しも認めてもらった試しがないし、むしろ直前まで怒られてばかり。

けれど、ここ数日の間で、いろいろ考えた。

何より、どうしてこの曲を弾きたいと思ったのか、

何を伝えたいのか、

結局は、そんなことを意識して弾いていた気がする。


演奏上のミスはちらほらとあり、まだまだ意識の低さが出てしまったが、弾いている本人は結構楽しかった。

コンクールなど、この曲を人前で弾くのは三回目。

だからこそまだまだ、届いていないその先がチラついて見えて、それを考えると吐きそうなほど苦しくなるけれど。

でも、今までで一番納得のいく演奏ができたのではないか、と一瞬でも思えたのが収穫だ。


袖に戻ると、鎌田先生に

「頑張ったね。」

と言われて、たったその一言に泣きそうになった。

 

 


それから衣装のまま楽屋を出て、聴きに来てくれた人たちに会いに行った。

 

大学の友達は、褒めるのが上手すぎ。

高校の同級生からは手作りのお菓子に花束までもらってしまって。

はじめてピアノで泣いたよ、と言われて、少しは表現できたかな、と嬉しくなった。


両親にも、はじめて言われたんじゃないかな。

「良かったんじゃない?」

って。

音楽はそんなに知らないのに、いつもダメ出しばかりされてしまうから。

わたしのために急遽買ってくれたビデオカメラで、しっかり録画してくれていた。

 

 

なんだかいつまでも興奮していて、いつまでも余韻に浸っていたい気分になった。

こんな高揚感は久しぶりだった。

 

 

 

 

数日前から、考えていたことがある、

それは、今日の発表会を、新しいわたしへのスタートラインにしようということ。


今回は、未成年での最後のステージ。

これが終わったら、今までのわたしとは別れようと決めていた。


楽譜を理解すること。

音のミスを無くすこと。

ひとつひとつを分解して丁寧に作り上げること。

構造や形式を意識すること。

体の使い方を考えること。

日々白紙に戻して練習すること。

作曲者に合わせて音を変えること。


ただなんとなく流れで弾いてしまうのではなく、

もっと自分に厳しく音楽と正面から向き合わなければいけない。

音楽は夢物語ではなく、現実として存在するものなのだから。


未熟なわたしの演奏では、作曲者に対して申し訳ないし、

聴衆に何も伝えられないと思うけれど、

今の、等身大のわたしを記録する場として、この機会を大切にしよう、と…。

まずはこの日、聴いてくれる人へ、今のわたしにできる最高の音楽を届けよう、と…。

 

 

 

 

周りの人たちのおかげで、昨日は本当に素敵な1日になった。

最高のステージになった。


けれど、やはり課題は山積み。

 

もっと、もっと、

音楽の本質を追及していきたいと思う。

 

 

聴いて下さった方々、本当に、ありがとうございました。