高校
不意に、あの寒い日のことを思い出した。 あの日は満月だった。 春の気配はまだ遠く。 はじめは曇っていたのに、だんだん晴れて、突然、月の全貌が露になった。 月が金色に光っているのを見て、わたしは外に飛び出した。 オリオンの三つ星が、きれいに見えて…
お片付けは苦手です。 捨てられないから。 テスト用紙。 読んでもいないアカンサス。 教科書・ノート。 お洋服を買った時の袋。 紅茶の空き缶。 包装紙にリボン。 小さくなったお洋服。 壊れた懐中電灯。 使い終わった電池。 川上弘美さんの描いたセンセイに…
先程、制服を脱ぎました。 肩の荷が、1つ下りたような気がしました。 実際は増えたのかもしれないけれど。 脱皮をした蝶の気分です。 いや、蝉の方が相応しいでしょうか。 終わったんだな、と思いました。 制服を着るのも、 自分の席があるというのも、 み…
夢を見ました。 しんしんと雪の降る中、白く染まった旧本館の前で、音もなくふわりと倒れたわたし。それからは、真っ暗で何も見えなくて、何も聞こえなくて。 わたしはたった一人で。 叫びたいのに声が出ない。 逃げ出したいのに体が動かない。 すると、突然…
2月9日、漱石の誕生日。 ついに来ました。 国立前期試験の受験票が。 以下、漱石の文より引用。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ 人間の目的は、生まれた本人が、本人自身につくったものでなければならない。 前後を切断せよ、満身の力をこめて現…
ピアノの先生にも言われた。 「自信を持ちなさい」 と。 どんなに素晴らしいピアニストでも、本番前は緊張する。 袖ではいつも、ステージに立つ不安や焦燥との葛藤が繰り広げられている。 けれど、みんな、図太い軸を持っている。 その根拠になっているのが“…
今の私は馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑い深くて人を容れる事ができないか、この両方だけしかないような気がする。 不安で、不透明で、不愉快に充ちている。 もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう。 (夏目漱石・随筆『硝…
21時45.4分 食の始まり 雲の隙間から丸い月がみえる。お願いだからこれ以上曇らないで。 22時00分 食分0.21 地学ノートを片手に空を眺める。 22時20分 食分0.48 半分くらい欠けた。メールしながら、同じ空をみているなんて…。素敵だな。 22時40分 食分0.74 …
たった今、宅急便が来て、なぜか父に 「出てきて」 と言われ…… 届いたものは、わたし宛。 それは、父からの誕生日プレゼントでした。 あまりに突然過ぎて、びっくりしています。 丈夫な封筒に入っていたプレゼント。 それは、月の土地です。 父はいつの間に…
走り出したくなった。 月が、あまりにきれいだったから。 プリズムから覗いたみたいな虹色の環状光が、不気味なほどきれいだったから。 春の夜風を、体中に感じた。 くすぐったくて、心地よかった。
地理の授業を思い出します。 黄色チョークで書かれた板書の中には、もちろん 『スリーマイル島』 『チェルノブイリ』 『福島』 という単語も並んでいました。 地図帳をチェックしながら、S先生の話を、他人事のように聞いていました。 これが私にとって、2…
私が3年前まで住んでいた場所は、津波に襲われた荒浜から2kmも離れていません。 近所にいた友達は、高校まで津波が来たと言っていました。 ニュースから流れる映像も信じ難いものばかりですが、水面から出た建物の上部をよく見てみると、知っている建物だ…
「世界に通用する音楽をしなさい。」 最近、ピアノの先生に言われる言葉です。 先生はすごい人です。 世界で活躍する人はこういう人なんだと、いつも実感させられます。 きっと彼女のような人を、強い人間というのでしょう。 私が今、この世で一番尊敬してい…
私の定位置である保健室の窓側のベッドには、いつも不安ばかりが堆積している訳ではありません。 今日みたいに曇り空がだんだん晴れていく時は、 ベッドの上の布団にさえ優しさを感じられます。 今日は、ピンクのカーテンにかかる陽射しが、とても眩しく感じ…
昨日の、晴れ渡った青空を、鮮明に覚えています。 気がつくと、 左腕には点滴、 口には酸素マスク、 そして心電図のピッ・ピッ・ピッ…という音。 意識がはっきりしてくればくるほど、 頭の中では様々な感情が交錯して、何も考えたくなくなりました。 今日は…
吸い込まれるような星空、 輝く月と金星、 長く伸びる糸杉、 静かな教会、 なんとも言えない虚しさ。 私は、ゴッホの《星月夜》が大好きです。 今日、クラスの友達のYちゃんと一緒に六本木まで行って来ました。 国立新美術館で行われている『没後120年 ゴッ…
今日の土曜講座は、3時間目まで授業を受けて学校を出ました。 自転車で一高前の坂道を下りながら、今日の漢文でO先生が話していた太宰治の『富岳百景』に出てくる、 「思いを新たにする覚悟でカバン一つさげて旅に出た」 という言葉を思い出して、冷たい風…
お疲れさまでした! 参加させてもらって、いろいろと楽しかったです! 中学生の前で話すのは、なんだか不思議な気分でした。 「ぜひ一高に来てください!」 と、本気で言っている自分が不思議でした。 けれど、まさかこんな立場に立てるとは思ってもいません…
Tくんの日記を見ていて思いました。 私も、負けていられないなぁと。 いまのわたしは、自分の目標に自信を持てず… 夢見ているのに、前に進めない感じ。 実際、高校生になってみたら、勉強もピアノも中途半端。 そんな時に、彼のエレクトーンを見て、 正直、…