MUSICA PROIBITA

中等理科の時間、担当の先生に30分早く退室することを伝えたら、

「どうぞどうぞ!」

と先に今日の課題をくださって。

授業が始まったら、出席簿も

「先に書いちゃっていいよ。」

ってわざわざ持ってきてくださって。

アンケートを終わらせたら、

「もう出ちゃってもいいよ。

頑張ってきてね。」

と送り出してくださって。


やはり、教育が専門の先生は実地を大切にしているのだろう、というのを感じた。

 

 

 

附属中の2年生を対象に、谷川先生が約30分間の合唱指導。

その後、特別演奏として二曲、演奏してきた。


中学生の歌声にはびっくりした。

さすが附属、という気持ちもある。

みんな一生懸命歌っていて。

 

 

わたしはと言えば、ちょうど1週間前に渡された伴奏譜で、合わせの練習も火曜日の夜だけ。

それも不安だった。

 


先生が生徒の前でわたしを紹介してくださって、いよいよ本番。

先生は曲の紹介をしながら、ピアノのここも聴きどころです、なんて言うからプレッシャーが…。


実際に鍵盤に手を置くとやはり少し震えたが、なんとかきちんと弾けたと思う。

練習ではあたふたしてしまっていた合わせる部分も良かったし、

前奏なんかは思いっきり歌えたし、

何より、盛り上がるところで先生と息が合った気がしてドキドキした。


たくさんの拍手も、とても嬉しかった。

 

 


終わって職員室の隣の部屋でお茶をいただきながら、附属中の音楽の先生と三人で少しお話。


谷川先生が、

「1週間前に楽譜を渡して、合わせも1回だけで、ここまで弾いてくれて…

大学の授業も忙しいのに、

たくさん練習したでしょう?」

なんて言い出すから照れていたら、

「去年も大学の授業の中で歌ったときに伴奏してもらったんですけど、本当にセンスがあるんですよ。

伴奏って難しいのに。

いいピアニストになると思っています。」

と言われて、もう、溶けてしまった。

 


中学校を後にして、お礼を述べると、

「ありがとうね。

また何かあったらお願いします。

じゃあまた大学で。」

と言ってバス停に向かう先生。


わたしはひとり大学への道を、しばらくは高ぶった心を落ち着かせるとができずに、傘で顔を隠して歩いて行った。

 

 

 

 

短いけれど、小さなステージだったけれど。

心に響く、とても楽しい音楽の時間だった。


去年、またいつか先生の伴奏をしたいと思ったことが、こんなに早く実現するなんて。

 

 

いいピアニストになりたい。

いい伴奏者になりたい。

 

谷川先生、ありがとうございました。

わたしも先生のいる世界に行けるよう、頑張ります。