感染者数がぐっと減った夏の間、わたしはドイツに来て初めて、国内をゆっくり旅行してきた。
一番の目的は、ピアノ屋さん巡り。(ロックダウン中はお店さえ閉まっていたので。)
ピアノには個体ごとにそれぞれ違った個性があって、まるで生き物みたいに、それぞれキャラクターが違っていて。
いろんなピアノに触れられること自体とても楽しかったし、お店の人が、やはりそれぞれの楽器やメーカーに愛をもって教えてくれるものだから、おかげでピアノという楽器についても改めて詳しく知ることができた。
しかし、これだ、と思えるピアノにはなかなか出会えずにいた。
この夏はもう無理かなと思い始めていた頃、知り合いから新しい情報が入り、最後に訪れたシュトゥットガルトで、幸運にも良い楽器と出会うことができた。
8月7日。
それはそれは幸せな出会いだった。
いろいろな考え方があると思うが、「良い楽器には教えてもらえることもたくさんあるから」という師匠の言葉と、お店で試弾させてもらった時のpの音の美しさに惹かれて、ものすごく高い買い物ではあったが、ほぼ即決で決めた。
もう一生手放さないんじゃないかな、と思う。
偶然良いタイミングで、良い場所で、いろんな縁が重なって巡り会えたものなので、喜びも一入。
そしてついに本日。
8月26日。
小さい頃からずっとずっとずーっと夢だった、グランドピアノがわたしのもとにやってきた。
搬入日が決まってから、ここ数日はそわそわしていた。
マンションの入り口から。
プレゼントのようにラッピングされてやってきた。
2人のおじさんが、あっという間に組み立て。
Steinway & Sons、1976年製のB-Flügelだ。
嬉しくて、うれしくて。これからどんな発見があるか、楽しみで仕方がない。
なんだか胸がいっぱいで。結婚する時って、こんな気持ちになるのかな、なんて。
小さい頃から、周りの男子なんかよりショパンやドビュッシーが好きだった。時には宮沢賢治や夏目漱石なんかにも浮気していたけれど。全然違うか。
でも、確かに一生のパートナーを見つけたような、そんな夢見心地でいる。
文化を大事にしているドイツでも、やはりコロナ禍でコンサートなどは厳しく規制され、後回しにされ。
わたしも演奏の機会から離れてしまって、悔しい想いも膨らむばかりの日々。
けれど、そんな世界の中で、この楽器と出会えたことに感謝して。またじっくりと、音楽と向き合って生きていこうと思う。
一生大事にします。
末永く、よろしくね。